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SBS(揺さぶられっ子症候群)とは?~その2(SBS理論の起源)

  • kanasasakura
  • 2017年11月27日
  • 読了時間: 2分

SBS理論の起源は、1970年代にさかのぼります。 そもそも1960年代までは、欧米でも「児童虐待」に対する問題認識がありませんでした。 このような中、1962年にアメリカの小児科医であるケンプが「被虐待児症候群(Battered Child Syndrome)」の概念を提唱し、親による身体への虐待があった子どもの特徴を挙げました(そのひとつに硬膜下血腫がありました)。 ケンプの議論を受けて、児童虐待への対応の必要性への認識が広まり、児童虐待に対応するための法律が全米の各州で1963年以降に制定されていくことになります。子どもが養育者などから虐待されていると考えたとき、一定の職業の人たちに通報を義務づけるという内容のものでした。そして、各地で通報を受けて対応を行うための児童保護チーム(Child Protection Team)が形成されます。 さて、このような状況のもと、体表に外傷の後がない乳児の実例を分析したガスケルチ(イギリスの小児神経外科医)が、1971年に論文を発表します。頭部外傷がなかったとしても、揺さぶることで乳幼児の硬膜下血腫が生じうるのではないかという主張を内容とするものでした 。 ガスケルチの主張を受けて、アメリカの小児放射線科医であるカフィーは1972年と1974年の論文で「むち打ち揺さぶられ乳幼児症候群 (Whiplash Shaken Injury) 」の概念を提唱しました。乳幼児に硬膜下血腫と網膜出血がみられ、体表にその他の明らかな外傷がない場合には、揺さぶりによって硬膜下血腫と網膜出血が生じたと考えられる、との仮説を主張したのです。 カフィーの仮説は1970年代から1980年代にかけて展開し、やがて「揺さぶられっ子症候群」理論に変化していったのです。 もともと「硬膜下血腫や網膜出血は、子どもが揺さぶられることにより生じうる」という仮説が、その後「子どもが揺さぶられれば硬膜下血腫や網膜出血が生じる」と、逆転した理論に代わっていったのです。 「揺さぶられっ子症候群」自体、もともと「仮説」として提唱されていたことに注意する必要があるでしょう。 〔文献〕 *C. Henry Kempe et al., The Battered-Child Syndrome, 181 JAMA 2 (1962) *A. N. Guthkelch, Infantile Subdural Haematoma and its Relationship to Whiplash Injuries, British Medical Journal 2 (1971) *John Caffey, The Whiplash Shaken Infant Syndrome: Manual Shaking by the Extremities with Whiplash-Induced Intracranial and Intraocular Bleedings, Linked with Residual Permanent Brain Damage and Mental Retardation, Pediatrics 54(4) (1974)  

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