福岡地裁無罪判決の意義――医学的立証の限界と刑事裁判
福岡地方裁判所は本年3月、生後約11か月の長女に暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪に問われた母親に対し、無罪を言い渡しました。本件の最大の争点は、被告人が故意に強い暴行を加えたのか、それとも被告人のてんかん発作に伴う落下等の事故であったのかという点にあり、医学的所見の解釈が激しく対立しました。 検察側の医師、特にこれまでも検察側証人として何度か法廷に立ってきた脳神経外科医のB医師は、受傷後約2時間で脳幹・小脳を含む著明な脳腫脹が生じていること、大後頭孔付近の骨折、後頭部の皮膚変色、脳幹部の橋出血や網膜出血などを根拠に、後頭部下側への強い外力、さらには複数回の暴行があったと主張しました。特に、大後頭孔という厚い骨が骨折している以上、強い外力が必要であると述べ、皮膚変色も打撲痕であると評価しました。 これに対し弁護側医師らは、脳腫脹の進行速度や程度から外力の強さを推定することはできないと指摘しました。家庭内の比較的弱い外力でも早期に脳幹腫脹は生じ得るとし、大後頭孔の「骨折」に見える所見も、乳児特有の未骨化軟骨結合(PIOS)の裂開にすぎない可能性
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