宇都宮地裁でも無罪判決!-またしても外力の立証を否定(内因の可能性)
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2026年3月10日、宇都宮地裁で、2018年3月31日ころ、当時生後7か月の男児の頭部に外力を加えて死亡させたとして、傷害致死罪で起訴されていた父親に対し、無罪判決が言い渡されました(裁判員裁判 裁判長 兒島光夫、陪席裁判官 高島由美子、岸こころ)。
この事件では、検察官側医師証人として5名、弁護側医師証人として2名の尋問が実施されていました。検察側医師は、男児の解剖の結果、顕微鏡で延髄を含む脳に複数の出血が認められたことから、これらは外力による出血(破綻性出血)であり、男児は「延髄損傷を含むびまん性脳損傷」によって亡くなったと証言していました。要するに、男児の死亡原因は、頭部に加えられた外力だというのです。
これに対し、弁護側医師は、顕微鏡で確認されたとする「出血」は、内因による出血(死戦期の漏出性出血)、解剖や標本作製時にできる人工的な産物(アーチファクト)等がほとんどである上、非常に微小なもので心肺の中枢とも離れた位置にしかないことなどから、死因になるとも言えないと証言しました。要するに、男児に外力が加えられたことが原因とは言えない、という内容です。また、男児にはてんかんのけいれん発作を発症したとみられる病歴や、脳細胞にてんかんの原因となる痕跡(グリオーシス)が認められたことなどから、てんかん発作に伴う呼吸障害等によって亡くなった可能性が高いとも証言しました。
裁判所は、これらの証言を踏まえて、「総じて十分な知識と経験を有する専門家の意見が対立しているのに、これを適切に判断すべき資料に欠けている」などとした上で、「本児の延髄や大脳の出血が外力によるもの(破綻性出血)であるかには疑問が残る」としました。また、「本児がてんかんのけいれん発作を起こし無呼吸等になった可能性は相応にあるといえ、この疑いは本児の病歴や解剖所見に裏付けられた具体的なものといえる」とも述べました。そして、「本児の死因が延髄損傷を含むびまん性脳損傷であることについては、十分な積極立証があるといえず、他の死因の可能性も残るから、常識に照らして間違いないとはいえず、相当の疑いが残る」として無罪を言い渡したのです。
刑事訴訟における検察官の立証責任を踏まえた、きわめて手堅く正当な判断です。どれだけ医学が進展しても、内因も含めて、まだまだ乳児の頭蓋内の損傷やその原因には未解明のことが多いのです。この判決のように、それらの立証が不十分な場合には、判らないものは判らない、と率直に認めなければなりません。その上で注目したいのは、本判決が頭蓋内の所見から、直ちに外力の立証が十分だとは言えないとしている点です。これは、今西事件でも問題になったポイントです。日本では、頭蓋内出血や眼底出血があると、すぐに外力=虐待であると診断されがちですが、今西事件や本判決は、そのような診断に大いに疑問を抱かせるものだと言えるでしょう。
3月3日の福岡地裁での無罪判決、3月4日の今西事件の無罪確定、3月10日の宇都宮地裁の本無罪判決と、SBS/AHT事件での無罪判断が続いています。このブログで繰り返し述べて来たことですが、SBS/AHT仮説のゼロベースでの見直しが求められていることは間違いありません。


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