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宇都宮地裁でも無罪判決!-またしても外力の立証を否定(内因の可能性)追記:弁護団声明

  • 3月10日
  • 読了時間: 5分

更新日:4 日前

 2026年3月10日、宇都宮地裁で、2018年3月31日ころ、当時生後7か月の男児の頭部に外力を加えて死亡させたとして、傷害致死罪で起訴されていた父親に対し、無罪判決が言い渡されました(裁判員裁判 裁判長 兒島光夫、陪席裁判官 高島由美子、岸こころ)。

 この事件では、検察官側医師証人として5名、弁護側医師証人として2名の尋問が実施されていました。検察側医師は、男児の解剖の結果、顕微鏡で延髄を含む脳に複数の出血が認められたことから、これらは外力による出血(破綻性出血)であり、男児は「延髄損傷を含むびまん性脳損傷」によって亡くなったと証言していました。要するに、男児の死亡原因は、頭部に加えられた外力だというのです。

 これに対し、弁護側医師は、顕微鏡で確認されたとする「出血」は、内因による出血(死戦期の漏出性出血)、解剖や標本作製時にできる人工的な産物(アーチファクト)等がほとんどである上、非常に微小なもので心肺の中枢とも離れた位置にしかないことなどから、死因になるとも言えないと証言しました。要するに、男児に外力が加えられたことが原因とは言えない、という内容です。また、男児にはてんかんのけいれん発作を発症したとみられる病歴や、脳細胞にてんかんの原因となる痕跡(グリオーシス)が認められたことなどから、てんかん発作に伴う呼吸障害等によって亡くなった可能性が高いとも証言しました。

 裁判所は、これらの証言を踏まえて、「総じて十分な知識と経験を有する専門家の意見が対立しているのに、これを適切に判断すべき資料に欠けている」などとした上で、「本児の延髄や大脳の出血が外力によるもの(破綻性出血)であるかには疑問が残る」としました。また、「本児がてんかんのけいれん発作を起こし無呼吸等になった可能性は相応にあるといえ、この疑いは本児の病歴や解剖所見に裏付けられた具体的なものといえる」とも述べました。そして、「本児の死因が延髄損傷を含むびまん性脳損傷であることについては、十分な積極立証があるといえず、他の死因の可能性も残るから、常識に照らして間違いないとはいえず、相当の疑いが残る」として無罪を言い渡したのです。

 刑事訴訟における検察官の立証責任を踏まえた、きわめて手堅く正当な判断です。どれだけ医学が進展しても、内因も含めて、まだまだ乳児の頭蓋内の損傷やその原因には未解明のことが多いのです。この判決のように、それらの立証が不十分な場合には、判らないものは判らない、と率直に認めなければなりません。その上で注目したいのは、本判決が頭蓋内の所見から、直ちに外力の立証が十分だとは言えないとしている点です。これは、今西事件でも問題になったポイントです。日本では、頭蓋内出血や眼底出血があると、すぐに外力=虐待であると診断されがちですが、今西事件や本判決は、そのような診断に大いに疑問を抱かせるものだと言えるでしょう。

 3月3日の福岡地裁での無罪判決3月4日の今西事件の無罪確定、3月10日の宇都宮地裁の本無罪判決と、SBS/AHT事件での無罪判断が続いています。このブログで繰り返し述べて来たことですが、SBS/AHT仮説のゼロベースでの見直しが求められていることは間違いありません。


 追記 弁護団は下記の声明を発表しました。


宇都宮地裁傷害致死事件(揺さぶられっ子症候群事件)について弁護団声明

2026年3月16日


弁護人  近 藤  峰 明

弁護人  深 見 愛 一 郎


 宇都宮地方裁判所は、2026年3月10日、傷害致死事件(揺さぶられっ子症候群事件)に対して無罪の判決を言い渡した。検察官は、本件について控訴を断念すべきである。

 この事件は、検察官が、検察官側証人の医師の誤った意見を充分に検討することなく、誤った起訴をした事件である。被告人のAさんは、本来法廷に立たされるべきではなかった。

 検察官は、Aさんのお子さんであるBさんが、Aさんの暴行による強い外力によって生じた延髄損傷を含むびまん性脳損傷によって亡くなった、と主張をした。しかし、検察官は、7名の専門家尋問を行ったにも関わらず、論告において、具体的な証拠をほとんど引用することなく、ふたりの医師の意見が一致しているという希薄な根拠に基づいて有罪を主張する、という極めて不十分な立証しかしなかった。判決も、「検察官は、本児の死因が(外因性の)延髄損傷を含むびまん性脳損傷であることを前提に、主張立証を組み立てている。したがって、この点に相当の疑いが残る以上、その先の検討をするまでもなく、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになる。よって、刑事訴訟法336条により無罪の言渡しをする。」として、検察官立証の不十分さを指摘していた。本件は、控訴をしても有罪の可能性はゼロである。検察官は、控訴を断念すべきである。

 本件と同様の揺さぶられっ子症候群の事件は、全国で、これまで17件以上の無罪判決が出ている(SBS検証プロジェクト調べ)。今年2月〜3月だけでも4件の無罪判決が出ている。いずれも「犯罪の証明がない」ことを内容とする判決である。そもそも、揺さぶられっ子症候群自体、科学的な根拠がない極めて不確かな理論である。しかし、検察庁は、その不確かな理論を検証することなく、揺さぶられっ子症候群を肯定する医師の意見に依拠して、これまで架空の事件を起訴し続けてきた。Aさんは、最愛の子を亡くした父親であったにも関わらず、検察官側証人の医師と検察官によって「子殺し」にされそうになったのである。決して、許されることではない。今後、検察庁は、自らに都合の良い意見を言ってくれる専門家のみに依拠するのではなく、揺さぶられっ子症候群に対して否定的な意見を持っている専門家の意見も充分に聞いて、終局処分を決めるべきである。それが、検察庁自身が言っている、消極証拠を充分に検討する姿勢に整合する。

 本件において、検察官側立証が極めて不十分であったことは、検察官自身が自覚しているはずである。それにも関わらず、本件を控訴することは、まさに権力犯罪である。私たち弁護団は、検察官と検察官側証人に対して、真摯な反省を求めるとともに、本件について控訴を断念するよう強く求める。

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