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「日本小児科学会の見解」をめぐって-なぜ反省できないのか?

  • 執筆者の写真: Akita Masashi
    Akita Masashi
  • 2020年10月12日
  • 読了時間: 2分

日本小児科学会が、「虐待による乳幼児頭部外傷(Abusive Head Trauma in Infants and Children)に対する日本小児科学会の見解」(以下、「小児科学会見解」)をホームページに公表されました。NHKでも詳しく報じられたようです。議論が深化していくことは歓迎すべきことですが、小児科学会見解は、結局、アメリカ小児科学会などが公表したAHT共同声明を焼き直したものにすぎません。AHT共同声明の問題点は、これまでもこのブログで繰り返し解説してきました。例えば、「SBS/AHT についてのかみ合った議論のために―AHT 共同声明を中⼼に―」「AHT共同声明」の再検討(酒井邦彦元高検検事長の論文について(5))」を是非お読みください。小児科学会見解についても、いくつもの問題点を指摘することができます。

 一番重要なのは、自らの主張に対する反省がないことでしょう。小児科学会見解は、AHT共同声明を引き合いにして「AHTの診断について司法の場で重大な誤解が生じている」などと主張していますが、なぜ司法が相次いで無罪判決を出しているのかについて、全く反省が見られないのです。常に自分たちの議論が正しいことを前提とし、それに批判する主張は「医学的妥当性がない」などとして切り捨てているだけです。「正しいから正しい。自分たちの正しい主張に反する主張は誤っている」と言っているのです。いわゆる循環論法に陥っています。この循環論法であるとの批判については、小児科学会見解は、何も答えていません。

 なぜ、司法が立て続けに無罪判決を出しているのか、それらの事件で、小児科学会の医師がどのような証言をしたのか、なぜ、その証言が信用されなかったのか、検証してみること(例えば、大阪高裁①大阪高裁②岐阜地裁)こそが必要なはずです。しかし、残念ながら小児科学会見解には、そのような謙虚な姿勢は全く見られないのです。

 小児科学会見解は、あたかも臆することなくAHTとの診断をすることが、チャイルドファーストであり、無罪判決となることがこれに反することであるかのように読めてしまいます。しかし、誤った訴追や親子分離は、決してチャイルドファーストではありません。このことを念頭に謙虚な反省をお願いしたいところです。

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